校長あいさつ
今年度から松江ろう学校に赴任しました。前校長(中村明子校長)と一字違いで、大変ややこしいですが、校長は代わりました。
私にとって、本校は36年前に初めて教員として勤めた学校です。幼稚部・小学部で5年間を過ごしました。当時、幼稚部に入学した5名のうち3名は、同じ聴覚障がいのあるお母さんと母子通園をしていました。その影響で最大限の聴覚活用のうえ口話教育を主とするろう教育が主流の時代でしたが、生活の中に手話が広がり始めました。幼稚部の行事の中で保護者さん向けの手話通訳をしたり、送迎で控室にいる保護者の方と手話学習会を始めたり。言葉を獲得していく子どもたちにとって、手話が果たす役割も明らかになってきました。手話は、早期から伝える伝わるわかるというコミュニケーションを積み重ねることができ、言葉を豊かにイメージすることができやすいと実感する日々でした。あれから、30年ほどたって戻ったろう学校は、手話があふれる学校になっていました。また、この30年間で、人工内耳や補聴器の進歩、スマートフォンによる情報伝達の進歩、音声を簡単に見える化できるアプリで、障がいによる不自由さは以前と比べると格段と便利になったのではないでしょうか。そういった社会になった今、「ろう教育」「ろう学校」の使命は何なのか。問い続ける日々です。
さて、今年度は、幼稚部に2名、中学部3名の入学生を迎え、全校で29名です。子どもたちにも教職員にも「やってみたい」「がんばりたい」ことを掲げて、それに挑戦、やってみよう、「TRY」の一年にしようとよびかけています。それぞれの「TRY」を応援します。私自身のTRYは、「手話力の向上」です。気持ち先行、表情で訴える手話で、相手に頼りすぎなので、もう少し対等になれるようにTRYします。
そして、創立119年めの今年。3年前に掲げた「松ろうグランドデザイン」も最終年になります。来年度の120周年に向けて、グランドデザインを見直します。今いる子どもたちや保護者のみなさま、教職員、同窓会員をはじめとする卒業生のみなさま、地域で支えてくださるみなさまの声をきかせてください。聴覚に障害のある子どもたちの多様な学びを支える場として、ろう教育の専門性を地域に発信する拠点として、同窓会のみなさまの心のよりどころとして、なくてはならない「ろう学校」です。みなさまと一緒に「グランドデザイン」をリニューアルしたいと思います。よろしくお願いします。
校長 中村 厚子